フラメンコ大好きSakuraのBLOG

フラメンコ歴だけは無駄に長いSakuraがフラメンコの感動を綴ります。たまに別の観劇記録もはさまります。最近書き始めたばかりの手前勝手な鑑賞記録です。

フラメンコと和の出会い~新橋演舞場地下ラウンジ東から~

豪華な演舞場特選御膳にもフラメンコの色彩が紛れこんでいる。
黄金のパエリアに舌鼓を打ち、白身魚と筍のバーニャカウダを味わう。

舞台が始まる前のひととき。とろけそうに贅沢な時間を過ごした後に、いよいよその時がやってくる。


5月16日(火)、大量に書いちゃった記事を、今さらだがアップする。(雑誌パセオフラメンコ9月号の忘備録にはこれをシュッ、シュシュシュッとまとめたのを載せて頂きました)

鍵田真由美と佐藤浩希が編み出した今宵の公演の舞台は、新橋演舞場の地下ラウンジだ。

壁際に提灯が並ぶ和そのものの空間を、フラメンコとの架け橋にしようという大胆な試みである。

かねてよりフラメンコと日本の伝統音楽の間には切っても切れない絆があるように感じていた私は、心躍らせずにいられない。

客席を見ると背広姿の紳士も多い。和服の美人も品良く微笑んでいる。

舞台には琴や和太鼓などの和楽器が並ぶ。

 

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開幕一曲目のタイトルは『トレド』。

観客の度肝を抜く音が、いきなり舞台に響きわたる。

サパテアードと和太鼓だ。

舞台は一気に過熱する。

黒に金、赤に金の帯も艶やかな舞姫たちが舞台に現れる。

男は黒の三人節。

完全に和のリズムで足を踏む。

激しくなるサパテアードの中、太鼓を打つ男が割りこむ。
トンチキトンチキトンチキチキ!

太鼓にパルマ! 楽しいっっ!

日本人がその内に生まれながらにして持つ和のリズムが、遠いフラメンコの国を通って戻ってくる感じ。

和。なのに完全にフラメンコ。

 

ピアノの音と三味線で静けさが表現される。

鍵田真由美の腕がしなる。

空間に円弧を描き、日本の心がうたわれてゆく。

鍵田の手が背後に並んだ踊り子たちの上に魔法の粉を注ぎ、フラメンコと和の妖精たちが目覚める。

舞姫たちのリズミカルな動きに心奪われる。

歌舞伎の見栄という演出に近い振りが、次々に繰り出され、どれもが鮮やかに決まる。

やはりフラメンコと和は近いなあ。近すぎるくらい近いなあ。

 

佐藤浩希の軽妙洒脱なトークが差し挟まれ、観客をフラメンコの世界に誘う。

フラメンコ初めて観るって人いますか? という問いかけに、ぽつぽつと手が上がった。

なるほど、この企画はまさに日本におけるフラメンコを拡大する役を果たしている。素晴らしい!

 

フラメンコはまずカンテという歌から生まれました。

ヒターノの嘆きの歌にスペインの民謡なども取り入れて、長い年月をかけて培われたのがフラメンコです。

差別を受け、貧しい生活を強いられるヒターノたちの歌う嘆き、アイーアイーアイー、のっぴきならない歌詞も多い。

だがそれを、不幸はいったん自分たちの中に取り込んで、立ち向かい、笑いにもなってしまうような文化がフラメンコです。

フラメンコの揺りかごと言われるヘレスでは、手拍子で遊んでいる子供たちが、スーパー帰りのおばさんに、踊って!と手拍子とかけ声だけで踊ってもらっちゃいます。

共通言語として踊りがあるんですね。
では、かけ声をかけてみましょう。

「トーマッサイ、トーマッサイ、トーマイトーマイトッ」

観客たちにそう歌わせてくれ、「オレー!」とフラメンコのハレオもちょっぴりだけど教えて、舞台と会話する方法があることを教えてくれる佐藤さん。
工藤夫妻が出てきて、調子を合わせ、観客たちもパルマとハレオの渦に巻きこまれてゆく。

 

2『ロマンセ』
男女の踊りである。

マヌエラ・デ・ラ・マレーナが一人立って歌い始める。

甥っ子マレーナ・イーゴのギターが絡む。
赤い衣装の男と深緑色の衣装の女。

工藤朋子の体が男に寄り添う。

雄牛のごとき男と同じ振り付けで重なるようにして踊る女。

まったくもってフラメンコらしい演目だ。

二頭の牛が静かに寄り添っている。そんな印象。

やがて激しいサパテアードの応酬となり、佐藤浩市がトーマッサイと観客に教えたばかりのハレオをかける。

明るめのブレリアでフィニッシュ。

素晴らしいカンテでフラメンコの真髄を見せられた気分。

 

3『ガロティン』
赤いステージに二台のギターの音。

オレンジにブルーのシージョなど、長いフレコが揺れるシージョを巻き付けた舞姫たちが鋭い所作を示す。

小粋に踊る四人の女性に、二人の男性が花を添える。

パンチの効いたガロティンだ。
佐藤が血の匂いのするカンテと称したマヌエラの歌は、明るさの中に切なさを伴って消えてゆく。

踊り手たちの円陣が素晴らしい速度で回り始める。

あまりの激しさに胸が詰まる。

生あるものは必ず失われる。

その切なさが胸に迫る。

 

4『うつしみ』
もののあはれなり。
鍵田真由美のソロだ。白い衣装に墨で刷いたような模様が裾に流れている。それが舞台上では波を描くように見える。
澄んで素直な女声の歌が沁みる。
地を転げ、うちひしがれる鍵田のソロ。
葛藤と共に体を揺らす。激しく揺らす。サパテアードが舞台を回る。
底に寝そべり、転がって宇宙が拡がる。
まるで水面で舞う白い胡蝶のようだった。
サパテアードで打たれるたび、激しく跳ねる水のしぶきが目に見えるよう。
歌はらはら、琴と太鼓で美しく舞う花弁だ。
ブエルタは水面に渦巻く夢。
祈りと共に水面に消えてゆく儚げなる幽玄の時。

 

5『セラーナ』
一瞬、ギターの高いメロディが琴の音に聞こえた。
佐藤浩希の音は、ピアノと太鼓が表現していく。
黒。日本人であることを誇らしげに表現する。
彼のフラメンコには元来、和なるものが根源に在る。
桜でも舞い散っていれば合うのではと思わせる上品さがあふれている。
佐藤浩希のサパテアードは鼓童の鳴らす太鼓の音にもとてもよく似ていると、初めて感じた。

エタヒターナメタボニエント
日本人の歌うスペイン語のカンテは、どこか繊細で耳に心地よい。
わざとらしさのないフラメンコ。

歌舞伎の見栄のようでもある鋭いブエルタ

嵐の音のようなサパテアード。

パルマ隊の確実で見事な拍子という音楽。
なるほど、これはフラメンコで和を表現している。

 

佐藤浩希によるトーク
シギリージャ:ただひたすら孤独に山で一人泣きに行く。
キリストが背負う十字架より重い荷を背負っている。
そんな運命を吹き飛ばす生命力。

嵐。

迫力あるねえ、と隣の妙齢の男性客がつぶやいたのが印象的。

 

6『むすひ』
世界平和を願って。
海を越えてつながるフラメンコと和が表現される。
日本の芸能の方々との出会い、つながり、いろいろな人の思いとのつながり、いろんなものが生まれてゆく。
こうして互いに探り、右往左往し、長いときを過ごしているうち、長い時間をかけて生まれてゆくものがあるのではないか。新たなものが生まれゆくのではないか。という思いを掻き立てられる。

黒のシンプルなドレスで登場する舞姫たち。
現れた女性たちはみな美しく、姫と呼ばれるにふさわしい風貌である。それは身体的な表情からもにじみ出ているのかもしれない。

歌に合わせて動く乙女らは、あたかも海底に咲く花である。
フラメンコの腕(ブラソ)、手(マノ)の表現に促されて、目覚めてゆくのは日本人の魂。
海外の人にもこれなら伝わるだろう。

我々は我々であることを忘れてはならず、我々が表現できるものに限界を築くべきではないのだ。

そんな思いが広がってゆく。

 

フラメンコに接することによって目覚める和の魂。
西洋の妖精であった踊り子たちは、今や日本の舞姫であり、民族古来の、原始の動きそのものとなって先鋭化する。

三味線に合わせて飛び跳ねる。

サパテアードを太鼓と共に打ち付ける。

あらゆる音を拾って目覚めてゆく五感。満たされゆく和の心。

なんという快感だろう…!
日本人の奥底に在る、そもそも木々や花々や水に溶け込んでいる和の遺伝子が、ゆっくりと目を覚まして飛び立ってゆく。
天地(あめつち)むすぶ空。
つながって広がるのは人の思い。
海に囲まれた国、日本。

愛しさに震える。
真由美さんに抱かれる。生まれいづる花たち。
泡がはじける。
プチプチと割れてゆく音が聞こえる。

生まれる生まれる生まれる。

花が。心が。

生まれる。
細胞が増えてゆく感じにも似ている。こんな音はしないだろうか。
表現したい人たち。人間。感激。
生きていることへの 情感 儚さ リズム

カーテンコールは最後まで和のサーヤーで弾けて終わる。
琴、元々合うと思っていたがやはり合う。
強靱な上半身、美しいラスト。
トーマッサイと見送る観客たちの熱い視線。

特別な夜、特別な空間で、私たちの生まれた日本を心から味わった。

フラメンコの可能性がまたひとつ、果てしなく広がった瞬間だった。

フラメンコルネッサンス21新人公演2017(2日目)

8月19日(土)フラメンコ新人公演2017(2日目)

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舞台に向かっておじぎしたいほど、素晴らしいギター、バイレソロの連続。 

はっきり言って今日は体力を使い果たした。
発散され、こちらにぶつけられてくるエネルギーがあまりにも素晴らしかったから!
最後の踊りが終わって席を立つときに呟いたのは「疲れた…」。
魂の最後の一滴までも搾り取られてしまった。そんな印象。
音楽も踊りも、本当に高度なものをみせていただいた。

たぶん、短い時間では書き切れない。

メモも取り過ぎて、ただでも腱鞘炎の右腕が悪化してしまいましたよ~。
いやはや凄かった。

 

(ギター)

森谷 忍 シギリージャ:第一音から華やか。流れるせせらぎみたいに詩情のあるギター。独創的なカデンツァ。創作的。アルハンブラにいるみたい。すてき♡ ドラマがあるなあ。キレーイ。まじで幻影が見える。

 

池川忠洋 ロンデーニャ:まぁるい水紋。深みのある音が心地良い。巧さを感じさせる。テクニシャン。鋭さが増した感じ。

 

(バイレ・ソロ)

小嶋智子のティエント:始まりの立ち方、見据え方、非常に勇ましかった。タンゴへの切り替えの時の照明、秀逸。


服部亜希子のシギリージャ:始まりのサパテアードが非常に良い。重々しい。顔の表情が見えやすくはっきりしている。

菊池真由美のシギリージャ:エル・プラテアオの歌声、いいな。体軸のぶれない人。音楽に踊りがぴたっとハマッている。ヅカの男役みたい。カッキー♡ ギターの軽やかなトレモロ。音と詩。踊りに意味が生まれてくる。サパテアード一つ一つが意味を持ち、くっきりとしたドラマが生まれてゆく瞬間を見る。

 

佐藤幸子のアレグリアス:明るい表情で大きな動きが小気味いい。元気。自分の世界を持ち、音楽を支配している感じ。音楽隊との相性も良い。日本人カンテが素晴らしいなと思っていて、後でパンフ見たら、エンリケ坂井さんだったという衝撃…!

 

有田ゆうきのソレア:素晴らしい入り方。申し分ない所作の重み。激しい動きと静かな動きとの両方ができる人。睨めつける目も良かった。アイレがあった。ここでも三枝雄輔の応援する魂が入りこんだパルマが凄い。ハレの舞台となる。有田圭輔さんのカンテも本当に素敵。そんな音楽隊へのリスペクトをしっかりと感じ取れる踊り。確実なサパテアード。ラスト、土をつかんで投げるような仕草。幸せをもらった感じ。好きでした。

 

平山奈穂のソレア:白と黒が混在するドラマティックな衣装。華やかでありながらどっしりと重たいソレア。音楽を引っぱる支配力。強い意志を感じる。ステージを横に移動するときの滑らかさ。静と動のバランスがいい。うわー、ついていきたくなる! 姉御!(って何だこのメモ?笑) 安定。赤に背景が切り替わると、衣装のアンダーの白が真っ赤に染まって見える。効果的な衣装。計算され尽くした舞台。まさに公演! マノの柔らかさ。くっきりと音が分かれて聞こえてくる見事なサパテアード。往年のスペイン人名バイレのようで、いつまでも心に残った。

 

内田好美のソレア・ポル・ブレリア:所作が大きく見映えがする。ドラマティックな表現力。カンテ凄い。エミリオー♪ 三枝雄輔さんはいったい今日何度目だ。凄い凄い。無音からサパテアドの音のみ、ギターのタパが絡んでいくシーンがあって迫力。ラストの去り方も美しかった!

 

鈴木雪花のシギリージャ:マヌエルの声が響きわたる中、ゆっくり光のスポット部分へ歩いてくる。洞窟の中、一筋の月の明かりの輪の中へ入ってゆくかのような演出。そしてドラマティックなサパテアード。カンテと靴音だけ。非常な集中力。ねばりつくような重さでエミリオのギターと会話している。いや楽しげ。オレー。

 

 山本由紀のペテネーラ:姿勢の美しさ。しなやかな柔軟性のある身体。パリージョが確実。演出が効いている。完璧な形。滝本正信さんのカンテいい、激シブ! 一つの完成された踊りを観た気分。

 

小河由里子のソレア:茶系の一風変わった衣装。川島桂子さんの声が悲哀をもって届く。これまた腕を上げるだけで世界を支配した。まさにソレアの始まり。貫禄さえ漂うゆったりとした動き。静けさにおける集中力。ソレアはこれがないと踊れない。川島桂子さんの声がとても合っている気がした。映画みたい。サパテアードも音楽的。奇をてらわずソレアを表現してゆく。実力者の風格。三枝雄輔さんが笑う。呼応する。音楽隊とのチーム感がとても素敵。三人を従えてびくともしない軸。なんという安定力。ブラッソの表現。日本人では初めて見た気がする。

 

寺島いずみのティエント:すてきな始まり方。ボランテが細かくて華やか。ティエントは赤も合うな。川島桂子さんをはじめとした後ろが楽しそう。タンゴの動きもねばっこくていい。ラストまで色っぽいー。

 

竹村歩のソレア・ポル・ブレリア:黒地に赤の大きな水玉。フレコの数はこのくらいがいい。今年もフレコは多かったが、なかには長すぎる多すぎるという場合も多く、顔にかかったり、せっかくのラインを隠したりと、ちょっと気になることもあったので。うまいねエとしみじみ。なんかギターサイコー。そのギターの音をそのまま自分で弾いてるかのようなバイレ。赤い服のせいか、ギターの赤っぽさと重なった。小柄な身体を自在に使いまくり。真に音楽的な感度の高い身体。マヌエル・タニェもエミリオ・マジャも三枝雄輔も、音楽隊がぜったいノッてる。陽のバイレ。生理的に気持ちいい。こういうのはもう、持って生まれたものだろう。真似はできない。けっこーシンプルなのに、なんじゃあこりゃあってくらい、とにかく快感。うーん、気持ちいい。

 

黒木珠美のソレア:きらめく素材を多様した黒の衣装。11段ボランテで豪華。一輪の赤い花が黒と対照的でいい。踊り慣れているなと思うのは腰が強いせいか。溜め息が出るほど完璧なソレア。ステージに詩がある。アイレがあふれている。とても完成度の高い舞台。

 

フラメンコルネッサンス21新人公演2017(3日目)

8月20日(日)新人公演2017(3日目)

さすがに3日目ともなると疲労の色も濃くなってくるが、そんな観るほうの事情など軽く吹っ飛ばしてくれる上質で濃厚な時間がこの日も連続で!
この日は長年の友人である山内佳代子さんが出場する。いったいどんな踊りを見せてくれるのか。
カンテ13名、バイレソロ24名、+エキシビション

以下、走り書きメモより。


(カンテ)

深谷恵子 マラゲーニャ:深い響く声。声量のあるタイプ。オレー。
山田裕子 シギリージャ イ カバル:エンリケさんのギターがいい。華やかなパッセージに耳が渦。カンテ、臼を引いているかのような右手の動き。粘っこさが出る。抑揚のある計算された音。マイクの使い方がうまいのか、きんきんせず、揺れが深く出てステキ。好きな声。あの華奢な身体から出ているとは思えない濁声がいい。ギター花丸。

 

(バイレ・ソロ)

相田良子 ソレア:鋭い視線。非常に音感が良い。川島さんのハレオ、盛り上がるなあ。重量感のある下半身、揺れない上半身◎。素直な正統派。ラインが美しい。

伊藤千紘 シギリージャ:ゆっくりとしてみなぎるテンション。めりはり。世界観のある踊り。ギタータパからラストへ向けてのエネルギー、爆発。

齋藤朋之 タラント:無駄な動きの無さ。ヴァイオリンとサパテアードの掛け合いがウキウキ♪ なんともリズミカル。音楽隊との一体感グー。こっちが踊り出したくなるようなタンゴ。たっのしー♪ 休憩前に大いに盛り上がった。

 
堅正はるか タラント:後ろで一本の三つ編み。物凄い音を立てるサパテアード。とにかく馬力のある踊り。腰の強さ。

 

久貝輝代 アレグリアス:椅子に腰かけて始まる。赤いベロアのバタデコーラにピンクベージュのマントンの配色がセンス良くて好き。形が美しい。ハデさはなくともどんな形もぴたりと決まってゆく。欲しい表情を的確にくれる感じ。綺麗~♡ 赤のサパトスがまたステキ。バタのボランテ部分が真っ赤な薔薇の花片のように見えた。斜めに倒れる身体の角度も美しい。美の法則を身体に備えている人。なんか音楽隊、えらくノリがいいと思ったら三枝雄輔のパルマ。2日目の連続パルマは凄かったなあ。

 

佐藤陽美 ソレア・ポル・ブレリア:足腰が強く、サパテアードの音が鋭く的確。若々しいメリハリ。エネルギーの伝わってくる舞台。三枝雄輔のパルマとの掛け合いもナイス。

 

津田可奈 シギリージャ:エメラルドグリーン一色。フレコもグリーン。のっけから目を奪われる雄弁な肢体。シギリージャの本質を見せつけられたような気持ち。

 

久保田晴菜 ソレア:黒一色フレコ付き。上背のある人で似合うが、若そうなのでもう少し若々しい衣装にしたら、もっと良かったのではとか余計なお世話なことを思ったけど、単純に趣味の問題かも。三枝雄輔さんがまた素晴らしいパルマ。踊りはシンプルで純粋。正統派、なのにものすごいエネルギーが発散されて圧倒される。音楽と三位一体で非常にバランスのいい舞台だった。しかし踊りが終わった後、ロビーでもこの人を見かけるたび、どこかで会った気がする会った気がすると思い続けていたら、友人のひと言でわかった。ガルロチだ……!! わあ!

 

津幡友紀 ロマンセ:スペインの活きのいいおかあちゃんのよう。いったい何枚重ね着してるんだという感じの重たさ。存在感。生活感あふれながら、人生をつかみ取ってゆうく確かさ。自信。説得力。力強さ。

 

山内佳代子 アレグリアス:身内なのでまったく冷静に観ていられない。それでもメモは取った。ピスタチオグリーンにピンクのフレコ。初めて見る取り合わせ。これが目にも鮮やかに焼きついて、へーっとなったところに、なんと靴紐までピスタチオグリーン! おそろいだ、おしゃれ!! 当人に訊いたところ、直前まで靴紐の色をどうしようか迷っていたらしい。これで正解! もともと細い人なのだが、ずいぶんすらりと背が高く見えるすとんとしたマーメイドライン。凛として見える。お姫様のようにキラキラしてたね。失礼ながら、これほど大舞台で映える人だとは思わなかった。線が細くて、ややもすれば硬い印象の頃もあったのだ。なのに、この日のアレグリアスは柔らかく華やかだった。なんといってもあの笑顔。笑顔苦手な人かしらと勝手に思っててごめんなさい。身びいきは置いておいても、超美人だった…! ピスタチオグリーンの衣装が、他の人にはない色で、ものすごく目立っていた。舞台構成も音楽もとてもよく練られていて、ドラマ仕立てになっていて、ものすごく考えて完成させたんだなあと、去年抽選に外れてからの彼女のショックと、そこから立ち直るまでに費やした時間と折れた心の数とか思って、じわじわ。同じパセオライターの先輩も、色っぽいのに男前とか工夫があったとか褒めてくださって、我が事のように嬉しくなってまた目頭を熱くするワタクシ。

本当にあっという間だった。この時間まで待つのは大変だったと思うけど、私にとってはありがたかったかも。感動して泣いちゃって、もうその後は泣きっぱなしでたぶん観ていられなかったから。ふー。終わったら両手が冷たくなってた。自分のほうが緊張しちゃってて情けない。やっぱり彼女のアレグリアスをずうっとずうっと見つめ続けてきたからかなあ。その素晴らしい完成形に出くわして、思いもよらず揺らされちゃったのかも。終演後、ロビーで会ってるときもずっと泣いてた。なんか自分でもこんなに泣くとは思わず、自分で自分に圧倒されてた。失礼。年を取ると涙もろ……もにょもにょ。


これでフラメンコの祭典『新人公演』三日間、すべて拝見して終了しました! たくさんの情熱、努力、奇跡の集中力に出会して、感動の三日間でした!
それぞれの時間、それぞれのドラマ、ですね。
ずっと応援してきた友だちの舞台に感動して、終わってもしばらくボロ泣きで頭痛くなった私でした。

打ち上げの席でも一緒できてよかったよ~~~。てか、いきなりの蕎麦屋、最高でしたね。閉店まで時間がなくてもがっつり美味しくておしゃれなもの食べてました私たち。

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ザクロの西京焼とかサイコー。遅くまで入らせてくれてありがとさんでした。今度ゆっくり食べに来たくなった、こちらも素敵な出会いでございました。たぶんココ

 

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昨夜はパセオフラメンコの仲間たちともフラメンコ愛を語り合えて良かった。

新人公演、参加した皆さん、関係者の皆さん、応援に駆けつけた観客の皆さん、本当に三日間おつかれさまでした! 例年はものすごく暑いんですが、今年はちょっと東京は涼しげでまだ楽でしたかね。
それでも疲れたことでしょう。いろいろ語り尽くしたい気もしますが、また改めて。
そろそろ結果も発表になる頃かな。しかし二日目のメモをアップするまで見ないぞ。
それにしてもレベルの高い舞台の連続でした。本気で圧倒されっぱなしでした。なんといっても音楽の素晴らしさ。最高峰のアルティスタたちのフラメンコ音楽を間近で何曲も何曲も聴ける、最高峰のパルメイロの音に浸れる、最高峰のギタリストの爪弾くギターの細かいパッセージに心を震わせられる…、こんな充実した時間もないでしょう。
も~~、ありがとう、フラメンコ!! だね!

フラメンコルネッサンス21新人公演2017(1日目)

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8月18日(金)初日

初日から実に見ごたえのあるフラメンコが続く。
皆さん本当に集中してレッスンしてきたのだなあと感動する。音楽はもちろんのこと、衣装にも細かくこだわっているなあと楽しくなる。全般的にすごくセンスが良くなっていて嬉しい。目を楽しませてくれるアイテムの一つ。
そしてアイレ。

日本人のフラメンコへの愛というか心意気というか、そういうものを感じられる三日間。どんなドラマが待っているか楽しみだ。

以下、勝手に印象に残った走り書きメモより。

 

(バイレソロ)
サパテアードは音楽との調和。足捌きそのものより、全体的な印象のほうに気持ちがいくようになった。気になったのは柔軟性。身体の柔軟性は踊りの必須アイテムだなぁと。

 

谷口祐子のアレグリアス:椅子から始まる独創的な入り方。白いマントンと光沢のあるエメラルドグリーンのバタ・デ・コーラが眩しく映える。空間に余韻が残るほど、見事なマントンづかいとバタづかい。とても上品な踊りだった。詩情あふれるシレンシオが素敵。マントンの動きはそのままギターの音をまとっているかのよう。う~ん、素敵♪

庄司裕子のタラント:タラントでこの色?とびっくりするようなショッキングピンクに紫の光沢のある衣装が、観ているうちにハマッてくるから不思議。濃厚なラズベリーアイス。とても濃厚なタラント。

池田理恵のシギリージャ:炎のシギリージャ。炎の女神。この人は特に、視線の使い方に細やかな気を配っているなという印象が残った。おかげで空間がとても広く感じられた。舞台の使い方が素晴らしい。ラストの○○○○○……。(走り書きメモ読み取れず。無念)

牛田裕衣のタラント:ロビーに第二部開始のベルが聞こえなかったため遅れる人続出。素晴らしい踊りだったのに申し訳ない。とても個性的なフラメンカ。力が入っているのかなと一瞬思ったが、そうではなく、こういう太さが彼女の個性なのだ。モイ・デ・モロンいいなあ。徳永康次郎さんのギターも魅力的。
ただ音響が今一つ。きんきんして聞こえる。こんなんだったっけ? どうやら席によって聞こえ方が違うようだ。広いホールだから難しいのか。

山形志穗のシギリージャ:パリージョの音がキレイ。振付が優雅。自然な立ち姿に好感。形、きれい。強すぎない上品さ。最初入ってくるときの歩き方にテンションがなかったので、んーと思ってしまったけど、踊りが始まったらステキだった。

(バイレ群舞)
カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」;
とっても可愛くて印象的な演出。子供たちの集中力にびっくり。一番小さい女の子と男の子のフラメンコのセンティードがあまりに優れていて惹きつけられずにいられなかった。なんかすごい拍手だったよ。会場大盛り上がり。松彩果さんは素晴らしいなー。

 

Armonia「マルティネーテ・イ・シギリージャ」;

石川慶子、知念響、漆畑志乃ぶ
バストン。ものすごい集中力。オレーな始まり方でとても印象的だった。

LAMA y SONACAY「グアヒーラ」;
稲田進、三枝雄輔

これ以上はない極上のエンターテインメント。プロのライブ。お揃いの水玉の色違いのタイ。二人の会話。かけ合い。仲良し。ちょっと漫才コンビを思い出した。ボケとツッコミ。どっちがどっちかわかるね?

斎藤克己フラメンコアカデミー札幌「デ プエルト ア プエルト」;
最初に出てきた赤い衣装の背の低い女性の踊りが秀逸! 身体が柔らかくてラインがキレイ。もう一回観たい。群舞はとにかく可愛い。髪の後頭部にキラキラ光る髪飾り。


 

 

小栗旬という花 ~髑髏城の七人 花~

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何かと話題の「市場前駅」に降り立つと、人々が群がって写真を撮っているから、便乗して撮ってみた。

無駄に広い空間。

この炎天下を、屋根なしの下、じりじり焼けながらあそこまで歩くのである。

なんでよー。

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日傘持ってたからいいようなものの。

てえか、さっさと市場前駅の近辺をカフェとかレストランで埋めてください。駅前、マジでなんにもないやん。おにぎりは豊洲駅で買ったとゆー。

…………閑話休題

TBS STAGE AROUND TOKYO

www.tbs.co.jp

 とやらに初めて行った。

度肝を抜かれました。ハイ。

こんなホール初めて。

舞台が360度回転します。そのため、暗転なしで舞台背景がガンガン変わります。観ているほうはちょっと船酔い状態になりますが、まあしばらくすれば慣れます。(慣れない向きには酔い止め薬をオススメ)

これは凄い! なんという鮮やかな舞台変化。

まさに劇団☆新感線という劇団にぴったりの舞台ではないか…!!!

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劇団☆新感線といえば、古田新太さんや堤真一さんが活躍する当時、よく行った。青山劇場だっけ? ちがったっけ? ロックな舞台で、当時から弾丸のように飛び出す台詞と高い身体能力を必要とされるアクションシーンの連続に圧倒され、通い詰めたものだった。

ほんとあれは何年前なんだろう? 何十年も前ではないと思うけど、とにかくずいぶんと久しぶりの劇団☆新感線の舞台である。

友人がとてもいい席を取ってくれたので、ありがたくお誘いにのらせてもらったのだが、関係者席に近かったせいか、二列ほど前の座席に山田孝之さんと長澤まさみさん発見。二人とも、顔ちっちゃ!! 体ほそっ!

www.tbs.co.jp

と・に・か・く、人生初体験のステージだった!!!

こんな舞台観たの初めて!

この360度のステージアラウンドのこけら落としだったようだが、『髑髏城の七人 Season花』!

スペクタクル! まるで映画と舞台をいっぺんに観たかのようだった!

3時間超えの時間がまったく苦痛にならない。最後まで目を瞠っていられる舞台。こんな舞台が観たかった!と、最後は嬉しさに涙が滲んだほどの新しい舞台だった……!

うえーん。ほんとにほんとにかっこよかったよ~~~、小栗旬!!

でもって、ほんとにほんとに大爆笑だったよ~~~~、古田新太!!!!

 

こうして家に戻ってしばらく経っても、まったく冷静に戻れない。

あのチーム、捨之介(小栗旬の役)率いるみんなに、もう一度会いたい! 今すぐ会いたい! あっの小栗旬の立ち姿、刀を担いだあの素晴らしい立ち姿をあらゆる角度から拝み倒したい…っっ!

そんな気持ちが沸騰し、爆発して、もーーーぜんぜん眠れないのである。

どうしてくれるんだ、劇団☆新感線

ああ、真夜中だけどおなかすいたなあ。

いい舞台というのは、おなかがすくもんなのである。

これまで多くの舞台を観賞してきたけれど、今日の体験(あえて体験と呼ぶ)は私のけっこう長くなった人生において、五指に入る傑作であった。

あー、といっても、脚本と配役はいろいろどうだろ、ってとこがないわけじゃなかったか。

山本耕史の役がな~~、すごくニヒルで鋭い恰好良い役なだけに、後半の扱いが惜しい。

小栗旬とツートップを張れるほどの存在感がいけなかったか。山本耕史の無駄遣い、と思っちゃうんだな。あんな扱いないよなって。

あの山本耕史の存在感を生かそうと思ったら、天魔王を山本耕史にするか、山本耕史の役をもっとラスボス的なものにして、小栗旬にラスト彼を殺させるか、なんかっこー、そういう大爆発的なものを期待させちゃう配役なんだな、山本耕史

まぁしかし、それもちっちゃい問題。

あれだけのスペクタクルな舞台は、観られただけで儲けもの。

そうそう、古田新太の贋鉄斎、これ最初から最後まで会場の大爆笑を誘っていた。

いや、私自身、観劇しながらあんな大声で笑い抜いたのは初めてかもしれない。

以前観たときも、古田新太はものすごい芸達者だったが、それが数年を経て、きっとテレビドラマなんかでもいろいろと技を磨き抜いて。

もはや向かうところ敵なしのスーパーパワーである。台詞のテンポがものっそいい! てゆか、もはや快感! あれほど完璧な喜劇のタイミングで弾丸のように吐き出されるスーパー台詞、観たことも聴いたこともない!

リニューアル古田新太は、小栗旬とは違った意味で、私のニューアイドルになってくれた……!!

 

いやもう盛り沢山…っっ。

ほんとにほんとに、誘ってくれた友人に大感謝祭。

あ~~~~~~~~、小栗旬の捨之介にもう一回会いたい! 会いたいったら会いたい!

もはや恋煩いである。

Season花の「花」は小栗旬か、そうかーーーーーーー!!!

もちろん、そうに決まっている。というか、男たちはみんな花のようだったが。

そうそう、山本耕史が純白の曼珠沙華がどっばーと舞台いっぱいに拡がる中央に立つシーンがあるのだが、これまたものすごいインパクト。目に焼きついて離れない美しさ。

男こそが花なのだというのは私の持論だが、マジで男というのは美しいと思わされるシーンだった。

 

なんか書いてたら貧血起こしそうになってきたので、とりあえず打ち止め。

小栗旬

以前もいろいろ観ているはずなのだが、今日ほど色っぽいと思ったことはなかった。

清野菜名ちゃん演じる少年のような沙霧との背丈の差に萌えたワー。あれは反則。あの背丈差の小栗旬にバックハグされちゃったら、ときめかないはずないじゃんー。

あー、

もう一回観たい。

フラメンコの歌詞 Tangos del Titi

パルマ教室とかカンテ教室をまったりと続けていて、踊りのほうはすっかりご無沙汰してしまっていた。が、最近いいなと思う踊り手さんに出会い、めでたく踊りのレッスンを再開。
まぁいろいろ劣化しているから、腰がイテーとか膝がイテーとか言い訳三昧だが、それでいいのだ。フラメンコには人生でほんのちょっぴりでも常に寄り添っていさえすれば幸せだ。
というわけで、ちみちみと(先生はもっと早く進めたかろうが、生徒の能力がそれなりなのでちみちみとしか進まない)タンゴ・デ・マラガを習得中である。

『タンゴ・デ・マラガ』といえば、フラメンコの演歌。

かつて、歌を聴いただけで泣けてしまった記憶があるが、ほんまいい曲。

歌詞もかっちょいい。

検索して出てきた歌詞は、うちのギタリストの先生に口伝てに習ってるのとはちょっと違ったりするけど、まあ、フラメンコじゃそんなことはザラ。

 

Viva Malaga la bella

tierra de tanta alegria

que si a prueba me pusiera

por ella diera la vida

 

麗しのマラガよ 万歳!

あふれる喜びに満ちたふるさとよ

僕を試してみるがいい

彼女のためなら命も差し出そう

 

私が習ったのだと、1行目のVivaはAdioになってて、私はこっちのが好きである。

だって、麗しのマラガよ、さらば! のがかっちょいいじゃん。

なんか切ないし。

このほかにも2歌とか3歌とかあったりするけど割愛。

 

今の私の問題は帰り歌のタンゴの歌詞。

お教室でも踊りに合わせて歌わせてもらってるのだが、何度歌っても、そこはジャマーダ入るから短く、と言われる。どうもカンテの先生に習ったのとは違うタンゴを求められてる気がする。

てなわけで、便利なインターネットを検索。

スペイン語のサイトでようやく見つける。

あー、これかー。せっかく歌詞覚えたのに、この短いVer.、微妙に歌詞も違ってるやんけ。
というわけで、またまた口でお経を唱えるようにしてブツブツと覚え直し。

以下、



Tangos del Titi cantato nello stile di – (Vienen bajando)

 

Ya vienen bajando por las escaleras
pimiento, y tomate, orejones y breva

 

pero dime què motivo te he hecho yo
pa que me tires la ropita a la calle
como a un picaro ladrón

 

Ay rueda, rueda la del general

フラメンコの歌詞ねえ。

これどういう意味なの?って教室仲間に訊かれて、ウッて詰まったのでスペイン語検索。

2行目なんて、「胡椒 トマト ドライアプリコット イチジク」? これ歌詞?
「ピカーロ ラドロン」は「いたずら好きな 泥棒」?

フラメンコの歌詞に普遍的な意味を求めちゃいけない気がする。

こないだ映画『サクロモンテの丘』を観たときも思ったけど、フラメンコの歌詞って場当たり系。その場のノリでどんどん変わっていく。皺だらけの笑顔も素敵なおばあちゃんが太陽が燦々と降り注ぐ戸外のテーブルで、昔のあたしのあそこはさ、って歌い始めたときは度肝を抜かれた。赤裸々ららら~~。

フラメンコは生きている。

 

ガルロチ特別招聘公演ラ・ルピ&アルフォンソ・ロサ

2017年4月25日(火)東京(新宿)ガルロチ
【バイレ】ラ・ルピ/アルフォンソ・ロサ
【カンテ】マヌエル・タニェ/アルフレド・テハダ
【ギター】クーロ・デ・マリア

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 そうか! フラメンコは男と女の踊りだった…!
今日という今日はそれを思い知らされた夜だった。
男がいて、女がいる。

生きとし生けるもののすべてはそこに始まり、すべての感動はそこから泉のようにあふれ出す。
 フラメンコ界を牽引する世界最高峰のアルティスタを招いてのガルロチ特別招聘公演は、万事控えめで隠す文化を育んできた日本人では、到底太刀打ちできなかろうと思えるほど、圧倒的な大人の色気に満ちた、本当にエスペシャルな舞台だった。


 真っ赤な衣装に身を包んだ大輪の薔薇のごときラ・ルピを中央に、3人の男たちが背後に付き従う。椅子に腰かけているラ・ルピが前傾姿勢となり丸くなる。椅子の上に展開されてゆく孤独の物語。赤地に白の水玉のタイも鮮やかに、アルフォンソ・ロサが柔らかなサパテアードを響かせる。彼女は一人。男たちに讃えられ、至高の存在となる。マラガの街角で偶然出くわして始まったかのような親しげなチーム感。ギターソロが効果的に差し挟まれる。乾いた音のトレモロは前衛作品を鑑賞しているかのような錯覚に陥る。二人のカンテが交互に声を響かせ合う。

 ソレアではサリーダだけで泣いている私がいた。胃に響くアルフレド・テハダの歌声。これは凄い。人はこんなふうに叫ぶように歌えるのだ。フラメンコは魂の叫びだという人がいたが、まさにそのもの。アルフレドの嗄れた声に、魂が張り裂けそうな想いを味わう。ガルロチの音響はいい。生の声のほうがいいと思う私にも、奇跡のように快感を届けてくれる。
 胸を掻き毟られるカンテ、そして星屑のように降ってくるギターの音に包まれる。

大人のソレアだ。上品で洗練された印象を受ける。

 ラ・ルピはゴージャスなマントンを纏って登場。中は光沢のある黒地に黒の織りの異なる水玉が浮かぶドラマティックな衣装だ。突き出された腕にドキッとさせられるタラントの始まり。マントンが宙を斬る。風の化身となった彼女は歌そのものだ。彼女の激しく胸を打つ独特な仕草に、ギターと踊りとカンテが渾然一体となって爆発する。

 赤い照明が女の血のようにも見える。ピカソの描く女を思い出す。女が見たいか。ならば見たいものぜんぶ見ればいいと言わんばかりの生命力の極限が、ラ・ルピの体を超えて全空間に表現される。何度も何度もくり返される迫力のブエルタは、女の曲線を見せつけてくれた。大人の色気全開である。
 ゆっくりと舞台を歩き、観客を睨めつける。全に女を滲ませくねる体。二人のカンテが立ち上がり、最後の瞬間へと向かう男と女。男の胸の中でマントンを纏わされるという演出。この時もあの時も慈しみながら、彼女は人生という舞台を終わらせる。
 そんな迫力の彼女だが、一枚のエプロンを着けただけで別の女になる。役者だな~。

 夜が更けるにつれ男と女の爆発力が増してゆく。

1部のややソフトで洗練された雰囲気など、どこかに消え去ったかのようだ。照明は落ち、秘めていたものを曝け出す夜がやってくる。端正な顔の王子でさえ、獰猛な獣性を剥き出しにする夜の闇。

 ゴージャスなサパテアードから始まったのは、粋男と女のアレグリアス。2部に至って、この二人のバイレをここまで堪能し尽くせる贅沢を思い知らされる。男も女も実に様々な表情を見せてくれる。大地を抉るかのような爆発的な音が続く。身体中を打って絞りだす腕の表現が凄まじい。

 アスリートのごとき集中力の中で、踊り手はどこまでも自由だ。本当の自由はこの集中した瞬間にのみ生まれるのではないか。
 1部のソレアではどちらかと言えば上品で洗練された印象だったアルフォンソ・ロサの踊りが、2部のファンダンゴから始まるソレア・ポル・ブレリアでは、爆発するサパテアドと共に、野獣になったまるっきりで豹変したかのような男ぶりを見せつけてくれた。

カ、カッコイイ…と目が♡になるワタクシ。

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 余談だが、フィン・デ・フィエスタのブレリアでラ・ルピが首に巻いていたのは、1部でアルフォンソが着けていたタイだった。男と女の睦まじさを感じた一瞬だった。
 ラ・ルピのパートナーであるギタリストが両手を挙げ、観客のハートをまとめて持っていった。

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 余談2;すっかりアルフレド・テハダのカンテに魅せられた私は、CDにサイン入れてもらってウキウキ購入。昨夜のカンテをぜひもう一度、と次の日うちでかけてみた。音響は実に素晴らしい。このところ古いモノラールの録音CDばかり聴いていた耳には、爽やかなほど。が、昨夜のあのド迫力な音楽世界は展開しなかった。

 フラメンコはやはり生がいい。CDは記録。思い出すための道具だなと思い知った次第。あとは自分的にラブを保存しておくためのもの。うむ。

 ふーっ。と大きく吐息。
 終演後、友人と今夜の舞台についてあふれた想いを語るとき、「カカオ99%の濃厚さだった」などと茫然とつぶやいた自分がいた。
 ガルロチのプログラムは1部だけで帰ってしまう方もけっこういてびっくりしたが、ぜひとも2部までがっつり堪能することをおすすめする。ぜんぜん違う顔を見せるバイレたちがそこにいるから。

 

追記;ガルロチの音響はいい。二人のカンテの渾身の歌声が、生の感触は一切失われないまま、最大限の迫力をもって私の耳と魂に響き渡った。